余命3ヶ月

占い館の前を通りかかった60代の男性に、笑顔で挨拶されました。
「こんにちは!見てもらってもいい?」と気さくに声を掛け、私の前に座られました。
「何を占いましょうか?」と尋ねると、「健康運でも見てもらおうかなぁ」と仰います。
「何か気になる症状はおありですか?」と質問すると、
「俺、病気なんだって。今日医者に言われた」とだけ、答えて下さいました。

やはり、結果は思わしくありませんでした。
ただ、占い師は医師ではないので治療はできませんから、
まずはお医者様からのアドバイスに従って、
健康管理を最優先に生活するようお話しさせていただきました。
すると、「余命3ヶ月なんだってさ。占い師なら……何て言ってくれるのかなぁって思って……」。
そして、詰まる声を振り絞って「3ヶ月……。何したらいいんだろうね……」と。

「人生の素晴らしいところは、"全てを一遍に知ることが出来ない"というところだと思います。
若い頃にしか感じられない事、中年にならないと気付かない事、死を目前にしないと見えないもの、
それぞれの時期にしか味わえないものを味わい尽くすのが良いのではないでしょうか……。
私なら、そうしたいと思います。」彼は「ありがとう」とだけ答えて去って行きました。
その後お目に掛かることはありませんでしたが、彼にとって人生の終盤は、
悲しみの日々だったのか、悟りを得たかそれとも無心か…。
私の言葉は果たして彼を傷つけなかったか、心配だけが残ります。



文・構成・編集 : MONDO / 取材協力 : 采慧(サキ)




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