こんな人は占いません(9)占い中毒お断り

ある日私を訪れた40代の会社員男性は、席に着くなり「運悪いでしょ。自分で分かってるん
です。」と相談内容をいっさい教えてくれません。「今まで生きてきて良い事なんて何もないし
…」と愚痴は延々と続きます。「今日はどのようなご相談ですか?」と尋ねると「だからぁ、運
を占ってよ!どうせ不幸なんだから」とカリカリしています。

実際にこの方の場合、拝見してみると全然不幸というわけではありませんでした。しかし、こ
のような強い思い込みを持つ方は、占った内容がたとえ良い結果であっても、受け入れてい
ただけないのです。中には誤解している方もいらしゃるかもしれませんが、西洋占星学には
"幸か不幸か"、という概念はありません。分かることは、激しい波を乗り越えなければならな
い困難の多い人生なのか、穏やかな波の平穏な人生なのか、ということだけです。

そして肝心なのは"困難の多い人生=不幸"ではないということです。歴史に名を残す偉人
や各業界のトップ達は、必ずと言って良いほど人並み以上の苦労運を持っています。大事
を成し遂げた人は皆、楽な人生を歩んではいないのです。もしあなたの人生が苦労の連続
だと思うのなら、大成する素質を持っている可能性もあるのですよ。

その方には、「確かにあなたの人生は苦労が多いかもしれませんが、磨けば光る才能もお
持ちです。苦労に振り回される状況を改善する努力を続ければ、必ず変われます」と申し上
げました。すると遮るように「全然当たってない。今まで色んな人に占ってもらったけど、当た
ったのは一人だけ」そうおっしゃるのです。「そのような占い師さんと既に出会っているのなら、
その方のアドバイスを大事になさった方が良いと思います」と退席をお願いしたところ、「また
来るかも知れませんけどね」と意外なお返事。「もしまた来られても、これ以上お話しできる
事は何もありません」と勇気を出してお断りしました。

ところが、一ヶ月後、隣に座る占い師さんのもとに彼が現れました。早速荒々しい声が聞こ
えます。「隣に行けば?私占いたくないから!」とお怒りの占い師さんに対して、彼は「隣は
ダメなんです。色々あって…」なんて気弱なやり取りをしていました。その後も、一度断られ
ている占い師さんを避け、他の方目当てに何度も足を運んでいました。自分の納得いく診
断結果を得られないが故に、何度も病院を変えセカンド・オピニオンをもらいに行き続ける
患者さんといったところでしょうか。

占いは、人生の荒波をどう乗り切るのか、より良い航海の為にどう舵を切れば良いかを
知るためのツールです。大しけの海で「どうせ嵐なんだから」と舵取りを放棄している船長
に、占いは必要ありません。



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文・構成・編集 : MONDO / 取材協力 : 采慧(サキ)



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